なみきやぶそば@とうきょうとたいとうく かもなんばん / たまごとじ
~老舗の貫禄 江戸前蕎麦の髄を味わう~
3月に建替をすると聞いたのが去年の12月。
行きたいな、と思いながらも重たい腰が持ち上がらない。休業まであと10日と差し迫った状況で無理やり合羽橋に用事を作って訪れた「並木薮蕎麦」。
締切ドリブンなのは相変わらずだが、今考えても些か呆れてしまう。
創業は「かんだやぶそば」よりも新しいものの、「藪蕎麦御三家」のなかでは一番古い1913年(大正2年)に建てられたこの建物、98歳のおばあちゃんになっしまったのだ。
雷門の並木通りにポツンとたたずむ姿は歴史を刻んだ貫禄があり、建替と聞くとなんだか惜しいような気持ちがないわけではない。
なるべく以前の雰囲気が残るようにするということだが、新しい建物は鉄骨造の3階建てになる。
とにかく寒いので中に入ろう。
メニューはそれほどあるわけではないが、しかしどれも旨そうでかなり悩む。
「並木薮蕎麦」の看板メニューである冬限定の「鴨南ばん」、それと「玉子とじ」にしよう。
土曜日なので昼時を外したのが正解、席が結構空いている、が直ぐに後から客が押し寄せて満席となった。
ちょうど入れ替わりだったようでラッキーだ。
奥にある黒電話が渋すぎる、アレも新築でなくなってしまうのだろうか。
左奥の壁は皆が寄り掛かるので壁がぼろぼろになっている。アレは新築で確実になくなるな。
入り口付近の寒いこの席も最後に埋まる。
4人の男衆が来て「鴨南ばん」2つに「ざるそば」2つを注文した。直後に「ざる」の一人が「ひよった」と、こぼしていたが2.5倍強の値段ゆえ、その気持ちはよくわかる。
入店時では誰も蕎麦を食べていなかったため、他テーブルの「鴨南ばん」が供される直前にフワッと出汁の香りが鼻孔を通り過ぎた。なんとも強烈な芳香で匂いだけで蕎麦を啜れそうな勢いだ。
この書はさすがに引き継がれるでしょうな。
注文から7,8分で登場した「鴨南ばん」、薬味別盛が嬉しい。
稀に、いや結構な確率で「葱」やら「ゆず」を先乗せしてくる店があるが、薬味の嗜好は人それぞれだし、そもそも味の変化を楽しむ薬味を始めから乗せてくる、その考え方がよくわからない。
鴨脂と蕎麦汁の相性がたまらなく良い。脂をまとった蕎麦を持ち上げて、勢い良く啜ると蕎麦汁も一緒に絡んで、コレもう絶品。
勢い良く啜るとが大切なので、欧米人にこの味を味わってもらうのは至難の業だな。
写真で見ても分かりにくいが、蕎麦はかなり細い。
ちなみに蕎麦は機械で切っているが、それを否とする御仁がいるそうだ。
手で切ったほうが旨いのかどうかはわからないが、少なくとも下手に切って幅が不揃いになるよりは、機械で均等な切り幅をだすほうが旨いのは確かだ。
鴨の精肉部分はそれほど旨くない。脂を食べるものだと割り切ればよいが、これを抜きで一杯やるだけの価値はない。
ちなみにこの日もちびちび酒を嗜んでる客が居た。
他人様がどうしようと構わないのだが、個人的にそれはないなと思った。
まず酒が菊正宗の樽酒700円。近くの老舗どじょう屋も同じような状態なのだが、さすがに時代が変わった。100年前は下りものとして珍重されたのだろうが、昨今の日本酒事情は大きく変わり、伏見・灘以外の酒がバツグンに旨い。いまどきアル添の菊正宗はない。詳しくは長くなるので、この辺の事情は別エントリーに譲るとしよう。
それともう一つ、土曜日は客が多いのでゆっくりは呑めないし、待つ方も嫌だ。それを是とするは粋ではなく野暮というもの。酒を呑むなら平日の夕方にしたいものだ。
こちらは連れのオーダーした「玉子とじ」。こちらも薬味別盛。
フンワリした玉子からチョコンと海苔が覗いている。
実は書いていて気がついたのだが、「鴨南ばん」と「玉子とじ」は釜前にとって対局に位置するメニューなのだ。
なぜかというと「鴨南ばん」は鴨を煮るので汁が煮詰まり濃くなってしまう。逆に「玉子とじ」は玉子の分だけ汁が薄くなってしまう。
そこで、この濃度を均一に調整する役が釜前である。ある程度、湯を残したまま湯切りをして少し薄めるのが「鴨南ばん」。完全に湯切りをしてまったく薄めないのが「玉子とじ」。汁は少し濃い目に作ってあるので、かけそばはその中間くらいの湯切りとなる。
まあ、これは藤村和夫氏の受売なんですけどね。
連れ曰く、「海苔がじゃま」と。そうですか・・・。
少しもらって食べてみたが、良い海苔を使っているので香りが強く、素朴な玉子の味と香りに優っている感がある。
海苔を敷かないと「玉子とじ」が形よく蕎麦に乗らないのかな、とか考えてみた。いずれ蕎麦屋の旦那に教えてもらおう。
江戸前蕎麦特有の「飲んで辛く、付けて薄く」な、かけ汁に2割ほどそば湯を入れて飲む。この店は汁が旨い、絶品だ。
そば湯もさらっとしており、作っていない、蕎麦を茹でた湯でとても良い。当たり前と思われるかもしれないが、そうでないところが多いのだ。
このエントリーを書いている今日、3月1日から10月末まで改装のためお休み。
8ヶ月間、従業員の皆さんは何をする人ぞ。
ライトアップまでされているこの看板もなくなってしまうのだろうか、それとも新店舗で流用されるのだろうか、店が新しくなったらまた来ないといけないな。
出不精なので東京に居るとどうしても都内の店にあまり行くことがない。「並木薮蕎麦」だけではなく、他の店もいつ建替、休業、閉店となるかわからない。行こうと思っている店、もちろん蕎麦屋に限らず他の店にも行くモチベーションが湧いてきた。
今回は老舗の江戸前蕎麦を十分に堪能することが出来た。
唯一心残りは「鴨南ばん」に一つしか入っていない「鴨のつくね」を、気がついたら連れに食べられてしまっていたことだ。
並木薮蕎麦
住所__:東京都台東区雷門2-11-9
電話番号:03-3841-1349
定休日_:木曜日
営業時間:11:00~19:30
駐車場_:なし
評価__:★★★★☆
訪問日_:20011/2/19
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